シナリオ習作集⑦『萌動、旅立ちの日へ』

通っているシナリオ教室で提出した課題を掲載しています。

 

課題:魅力的な叔父さん

(叔父さん=父の弟 であること)

本文 20x10 詰め原稿用紙 10枚

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題名 『萌動、旅立ちの日へ』

 

人物

山並颯介(17)高校3年生の男子

山並忠次(52)颯介の父

山並一葉(47)忠次の妻。流川四朗の姉

流川四朗(42)颯介の叔父。姿のみ

担任(54)男性教諭

 

▼ 本文 ▼

 

○末成高校・教室

   担任(54)の教科書を読む声が聞こえる。

   山並颯介(17)が広げているのは紀行本。

   ヒマラヤ山脈に背景に立てかけられた

   自転車と、満面の笑みを浮かべている

   流川四朗(42)の写真が載せてある。

   脇のノートに(以下の)>丸と矢印が書きこまれる。

  (『)松山→(海を越えて)北九州→博多→

  (海を越えて)→上海→ラサ→カトマンズ<(』)

   突如本とノートが(颯介から)>取り上げられる。

  (颯介の)>目の前には担任がたたずんでいる。

担任「授業中何やっとるんや?」

   颯介、担任に手を伸ばすも避けられる。

担任「放課後に職員室まで来なさい」

   教壇へと戻る担任を睨む颯介。

   ひそひそ声が辺りから聞こえる。

 

○同・職員室

   向かい合う颯介と担任。担任の手には

   授業中に颯介から取った本。

担任「流川四朗……お前の叔父さんやったな。

 書かれた本、読んだことあるわ。世界自転

 車旅の記録。ノンフィクションの小説で賞

 も取られていたな。……そんな叔父さんの

 後を追って、冒険家にでもなるつもりか?」

  (颯介は)>担任から一枚の紙を渡される。

担任「真面目に両親と話し合ったんか?」

   その紙は『進路希望調査書』志望校欄

   は空欄で、就職に印が入っている。

担任「バイトもやめとけ。お前のお母さん、

 心配して学校まで連絡してきたんやぞ?

 校則でバイトば禁止されとるん知っとるな。

 黙ってたるが辞めるまで本は預かっとくけん」

   俯きながら想いきり顔をしかめる颯介。

 

○コンビニ前

   晴天。田畑にポツンと佇むコンビニと

   駐車場に停まる引越し業者のトラック。

   荷台に腰掛け飯を食う制服姿の颯介。

   突然傍らのケータイが震え出す。

   メールが届いていた。差出人は叔父の

   流川。内容は(元気か?)(今は南米

   のアンデスにおる)そして旅の話が続

   き(姉さんによろしく)で締めくくり、

   追伸として(大人になったら一度広い

   世界へ飛び出してみぃ。きっと世の中

   の見方が変わるけん)と綴られていた。

   颯介、笑みが消え、うなだれる。

颯介「ごめん。折角の本、盗られてしもた」

 

○山並家・仏間(夜)

   御仏飯を仏前に添える山並一葉(47)の手。

   御輪を鳴らすと手を合わせる。

   仏間の座卓、上座に山並忠次(52)と俯く

   山並颯介(17)が向かい合って座っている。

   二人の間には『進路希望調査書』が。

山並「せめて相談ぐらいして欲しかったなあ」

   溜息をつく忠次に並んで、一葉が座る。

一葉「あんた、大学ぐらいは出ときなさい。

 それとも行きたくない理由でもあるん?」

   口を閉ざしたまま俯いている颯介。

一葉「まさか、叔父さんみたいになりたいと

 か言うんじゃないやろね? ……ダメよそ

 んなの。知っとるやろ? 叔父さんがどれ

 だけ迷惑かけてきたか。郵便とか色んな手

 続きとかを代わりにしてあげてるのに、帰

 って来たら部屋まで用意してあげて。……

 遭難届を出したこともあったわ。……バイ

 トもそのためなん? じゃけん就職ば選ん

 で、お金貯まるまで繋ぎにするってこと?」

   膝の上で引き絞られる颯介の握り拳。

一葉「黙っていんで答えたら、颯介!」

   颯介、突如座卓を両手で叩きつける。

   静まる一同。

山並「やめなさい、母さん……」

   山並、颯介に向き直る。

山並「な、颯介、別にいいんやぞ。やりたい

 ことやったら……」

   颯介、顔を上げる。

   一葉、口が開いたまま忠次を見つめる。

山並「ただ秘密にするのはなしやけ。じゃな

 いと応援することも出来んやないか」

   颯介の表情が強張る。

山並「若い頃、誰もが思い描く夢を、素直に

 追いかけられるんなんてめったにおらん。

 叔父さんはそんな人なんや。確かに母さん

 には迷惑のかかっとるけん、じゃけど父さ

 んは尊敬しとるんやぞ。……大人しうて口

 の重いお前が、学校で居づらそうにしとる

 のは知っとるけん。大学ば行きとうないも

 世界を旅したい思うも納得できる。それが

 前向きに生きてく力になるなら良いことや。

 でも、旅終えたらどうする? 叔父さんみ

 たいに本を書くか? それには勉強も必要

 やろう? 旅と同じで、今しか出来へんこ

 とがあって、それ逃してお前が後悔しとる

 とこは親として見とおないけん。皆、お前

 の味方ばなりたいんやぞ? 独り抱え込む

 な。夢の叶え方、一緒に話し合おう。な?」

   颯介、一層顔と拳に力が入り、頷く。

 

△ 講評 △

○ 颯介は世界を自転車で旅している叔父さんに

 憧れ、魅力を感じているのですね。しかし、母親

 には迷惑がかかっており、という状況。

 お父さんの説得に力がありました。

○ 出来れば叔父の流川も写真やメールのメッセージ

 だけでなく登場してほしかったです。

 自転車で帰って来た流川は、自分に憧れる甥と、

 どんなひと時をもつのでしょう。

 それが見たいと思いました。

 

※人物表にて、最後に句読点は不要です。

※人物表・山並一葉のところは『颯介の母』のように、主人公からの関係を書くようにしてください。

※本文 

 (メールが届いていた)→(届いている)

 (叔父の流川)→ 叔父は不要

 (綴られていた)→(綴られている)

  仏間にて、颯介は既に登場しているので改めてフルネームと年齢は不要。

 (忠次に並んで)→(山並に並んで)

 (静まる一同)→名前を書いてください